スピードを出すことの責任




次なる事態を想定した運転


1)左足をブレーキペダルに置いたままにする
2)オーバードライブギヤを使わない
3)追い抜くクルマ(走行車線を走るクルマ)の前方車間距離を確認しながら走る
4)前走車のいるトラックを追い抜く場合には事前にパッシングで合図をする
5)追越車線を走る前走車には車間距離50mまでは一気に追い付く
6)前走車がいないのに追越車線を譲らないクルマは迅速に走行車線から追い抜く
7)追越車線の前走車の確認は、直前車だけでなく、数台先まで見ながら走る
8)やむおえず走行車線から複数のクルマを抜く場合には一番左の走行車線から抜く
9)連続運転時間が1時間以上なら無理をしない


1)いわゆる左足ブレーキですが、これには左足で正確なブレーキ操作が出来るという前提があります。出来ない場合には無難に右足でブレーキングすべきなのですが、右足をアクセルから離してブレーキペダルを踏むまでにコンマ数秒のタイムロスがあり、ハイスピードになるほど空走距離が伸びますから、事故を回避する目的では左足ブレーキをマスターしておいても損はしないでしょう。日頃から練習しておけば慣れてしまいます。

2)これは簡単なことですね。燃料が無駄とか、室内がうるさいとか、色々ありますが、それならば急ごうなどと考えないことでしょう。低めのギヤで走ることは素早い加減速には欠かせない条件ですし、以前説明した「タコ踊り」に陥ってしまうような、急ハンドル操作が障害物回避に不可欠な事もあり得るので、アクセルコントロールでスピン回避するにはオーバードライブギヤでは不都合な場合があるのです。

3)追い抜くのは走行車線のクルマですが、抜こうとするクルマとその前車との車間距離が詰まっている状況では、抜こうとするクルマは追越車線に進路変更してくる可能性があるのです。そのクルマのドライバーが万一後方確認を怠ったら、また速度差の目測を過ったら接触事故、驚いたことによる急ハンドル・急ブレーキが事故を引き起こす可能性もあります。急に進路変更されても回避できる速度に事前に減速しておく必要があります。



無理ならスピードを出さないこと

4)トラックドライバーさんから御意見をいただいたように、トラックは急いでいる事が多いのですが、残念ながら重い車体と荷物のために、機敏な加減速が出来ません。トラックドライバーは、できる限りブレーキを踏まないで一定速度で走りたいので、強引に追越車線に割って入ります。ただし予想を遥かに上回る速度で接近してくる後続車両を見落とすことは日常的にあります。パッシングによってトラックドライバーに注意を促すことが必要な場合があります。ただし、基本は3)で説明したとおりですから、あくまでもエマジェンシーです。

5)これには結構反論がありました。前走車を威嚇する行為という意見が多いですね。確かに威嚇行為でしょう。しかし、これほど前走車のドライバーを知る方法は他にありません。交通量の多い深夜の高速道路で、追越車線を走るトラックが右にウィンカーを出すのをご覧になった事があるでしょうか? 追越車線を走る前走車に対して車線を譲るよう促す意味だけではなく、追い付いてきた後続車に対して前方が塞がっている合図でもあるのです。なぜ合図を出すかといえば、後方確認を怠っていない証拠ですね。つまり後方から急接近するクルマがあるにも関わらず、何も反応を示さないクルマは厚顔ドライバーなのか、後方確認を怠っているのか、いずれかです。一気に追い付く事で前者のドライバーを把握する事ができるのです。ただし50mまでですよ。接近されるドライバーがきちんと後方確認している場合、その人は恐いのですから。

6)法定速度を守っていれば、追越車線を譲る必要はないと思っているドライバーは少なからずいるものです。5)のような状態で追い付いても譲るどころかブレーキを踏むことすらあります。威嚇なのか恐怖なのかわかりません。単独で追越車線を走っている状況を確認した段階で走行車線に車線変更してそのまま追い抜くのが最も無難でしょう。間違っても「解らせてやる!」などと思って、あおってはいけません。

7)急いでいる時に追越車線が混んでしまうとイライラして、ついつい直前のクルマをあおってしまう人がいます。直前のクルマが譲ってくれたとしても意味はありません。数台先までの状況を見たうえで、駄目ならとりあえず待つしかありません。意味もなく前走車をあおってみてもイライラ病が伝染して、交通事故に巻きこまれるリスクが増えるだけです。待てば必ず前方が開けますから、ひと息入れましょう。

8)個々のドライバーの寛容不足や国民性だと思いますが、少しでもクルマが混雑してくると、追越車線にクルマが数珠つなぎになる傾向があります。なぜか東北自動車道の3車線区間でよく見かけます。いちばん左の走行車線がガラガラで、追越車線が数珠つなぎになっている状態。仕方ないので我慢することが最も得策ですが、どうしても急ぐならできるだけ一番左側の車線から追い抜きます(片側3車線以上の場合)。真ん中車線は左右からクルマが車線変更してくるために追い抜きには適しません。また一番左ならば、緊急時に路肩回避が可能です。

9)これは説明の必要はないですね。疲れれば判断力は低下します。

 善良かつ寛容なドライバー諸氏には1〜9の全ては、お勧めは出来ませんが、仕方ない事もあるかもしれません。たとえば助手席の彼女がトイレを我慢する限界とか、あなた自身が下痢をしていて突如ピンチになったとか・・・。やはり最も交通事故回避に役立つのは急がない人が急ぐ人に寛容になることであり、どうしてもスピードを出したい人が事故を起こさないための方策に責任を持つしかないのでしょう。「スピード出すな」と言われて、みんなが言う事聞くとは考えにくいですよね。たまには「出すな」ではなく「出すなら」も必要なのではないでしょうか。


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