運の尽きは交通事故遭遇の時




自動車と自転車の区別がない人

 事例4「止まれ標識がない交差点でも安全確認で止まった前を、止まれ標識無視で通過する奴」について。例によって具体的な状況について想定してみます。

想定11)一方通行のような狭い道路同志の交差点で止まれの標識が無ければ、そこが見通しのきかない交差点でも一時停止どころか、徐行すらしない。

想定12)住宅街のように比較的狭い道路で、交差する道路を写し出すカーブミラーを全く確認しないまま普通の速度(徐行でない速度)で走り続ける。

想定13)道路幅が狭いところや対向車とのすれ違いなどの際に、歩行者(自転車)を追い抜いたり、すれ違う場合の間隔が1mにも満たない状況でも速度を落とさないで通過する。

想定14)明らかな優先道路や止まれ標識のある交差点であっても、交差点で出会った相手が止まるだろうと判断すれば一時停止や徐行を行なわない。

 他にも多々ありますが、なんか運転免許証の学科テストのようになってきたので、このくらいにしておきましょう。
 見た目に人相の悪い方が運転していたり、おおよそモラルや安全意識など持ち合わせていそうもないようなマルソウ系のクルマなら別の問題なのですが、きわめて善人そうな方々でも日常的に想定11〜14のような運転を行なうところが大きな問題です。
 私の場合、自宅やオフィスから半径5km以内のところに出かける場合には自転車を愛用するので、運転者としてだけでなく、歩行者の立場でも上記のようなクルマと毎日出会ってしまいます。そんなクルマと出会って思うことは「運転免許証をもっていない主婦や高齢者の自転車と何も変わらないなぁ」ということ。交通法規など元々知らない方々ですし、人生も長くなるとずうずうしくなってしまうでしょう。また老齢になると無意識のうちに自己防衛の意識が低下してしまいます。
 そんな同類の方が交差点で出会ったり、狭い路地ですれ違ってしまう偶然があります。クルマ同志、自転車同志なら比較的軽傷で済むかもしれませんが、自動車と歩行者であれば簡単に死亡事故になってしまいます。
 特に想定11〜14のようなドライバーは、自分が人身事故を起こす危険性を認識しているのでしょうか? 多くの方が「今まで事故を起こしたことがない」「自分は運がいいから大丈夫」「急いでいるから仕方ない」などと勘違しているのでしょう。ほんの数秒の違いで一生を棒に振る危険性、人の命を奪ってしまう可能性など全く考えた事のない恐い方々です。運の尽きは事故の時です。



何がいちばん危険なのか

 堂々と書いてはいけない事ですが、私は必ずしも交通法規に従って運転していません。最も分かりやすいのが速度違反ですね。40km/h制限の道路を40km/hで走ったことは長い運転経験の中でもほとんどありません。
 ただし、30km/h制限の道路を20km/h以下で走ることは日常的にあります。つまり交通法規や規制は一定の基準と認識していて、常に交通事故を起こさない状況を想定しながら運転しているのです。今回の例は後者の制限速度以下で走る代表例です。
 速度だけではなく、止まれ標識のない交差点でも頻繁に一時停止しますし、住宅街や生活道路では制限速度以下で走るのが当たり前です。理由は既に書いたとおり歩行者を保護すること、加えて他車のドライバーを信用していない事によります。
 孟子が唱えた性善説を支持する私としては、本当はドライバー全員を信用したいのですが、交通事故を避けて通る目的で交通社会では誰も信じない事にしています。正直なところ警察官(専門職の白バイライダーや交通機動隊のドライバーも含めて)でも運転については全く信用していません。人間である以上ミスも犯しますし、元々の能力にも問題があるかもしれないからです。もちろんプロである私自身もミスを犯して、運だけで事故を回避できている場合も無いとは言えません。
 少し偉そうで恐縮ですが「絶対に交通事故を起こしたくない」と思う方には徹底した意識が必要だと思います。「何がいちばん危険なのか」「どんな危険が起こり得るのか」を常に考えている事が交通事故回避にとっていちばん大切な基本です。
 余談ですが、私は仕事の都合で普段からスポーツマフラーを付けて比較的音量の大きいクルマに乗る機会もありますし、見た目にも怪しそうな風体の事が多いのですが、それによって得をする事も多々あります。音に驚いた歩行者の多くは立ち止まりますし、他車に譲っていただける機会は多いのです。ただしイメージとは裏腹に多くの場合は自ら率先して道を譲りますし、音量があるだけに住宅街や商店街ではエンジン回転数を抑えてゆっくりと走るようにします。
 いわゆる走り屋系のクルマは、昨今ルーレット族とかドリフト族とか言われて社会的に敵視されていますから、さらに気を使います。ところが実際のところ生活の中で身の危険を感じる事態を引き起こし、社会問題として重視しなければならないのは、今回取り上げたような歩行者や他車への意識や心配りの足りない善良ぶっているドライバーたちでもあるのです。人に不快感を与えたり迷惑をかける暴走行為と合わせて、強く意識していく必要があります。
 社会的に暴走行為と言われてしまっても仕方ない走り屋諸氏には、特に日頃からの安全意識によって名誉挽回を期待したいですね。私同様に音量のあるクルマのオーナーさんは暖気運転を控えて低回転走行で暖気運転の代わりにしたり、歩行者の多い踏切でのエンジンストップなどを是非試してみてください。少しずつでも理解者は増えてゆくものです。


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